春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
きっとあの人も同じように勝手に父に結婚をさせられたに違いない。少し前に追い出されるようにこの家から嫁いでいった腹違いの姉を思い出す。
無理矢理結婚させられた彼女は、今どうしているのか? もしかしたらあの姉がいればこの結婚の相手は私でなくても済んだのかもしれないのに。
そんな色んな感情が渦巻く中で、私はその場で自分のスマホを取り出しお気に入りのオルゴールショップのページを開いていた。
――――あなたの幸せなんて誰も願っていない。
冷静になれば馬鹿な事をしていると気付けたはずなのに、父の横暴さに自分の怒りを持て余した私はこの時それを嫁いだ姉に向けてしまったのだった。
けれども白く綺麗な箱が届いた日、私は少し迷っていた。こんな事をして何になるのか、と。それでもその行動を止められなかったのは自分の心の弱さなんだと思う。
知り合いの男性に配達員のふりをして姉の新居に荷物を届けさせた後は後悔しかなかった。だから……罠だと分かっていてもあの誘いを断ることはしなかったのだ。
……もしかしたら姉とその夫に会って、知りたかったのかもしれない。勝手に親に決められた結婚の先に何かしらの幸せがあるのか、という事を。