春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
何をしてるんだろう、私は? 嫌いになるも何も好きになる予定だってありはしない、私と一輝さんは契約結婚という形だけの夫婦になるだけなのに。
……一輝さんが悪い、変に私の心を揺さぶるような言葉ばかりを言ってくるのだから。契約結婚で構わないと一輝さんも納得したくせに、どうして期待させるような事をするの?
「期待? 私が一輝さんに何を期待してるって言うの?」
自分の中で隠していたはずの感情に戸惑い、そして必死でそれを無かったことにしようとする。誰かに必要とされたい、誰かの特別になりたい。なんて、ずっと昔に諦めたはずなのに。
なのに……
『良かった、そう言ってもらえて安心しました。こうして梓乃さんからメッセージが来たので、私は少し期待してしまいそうです』
一輝さんが期待しそうって、何をですか? なんて聞けるわけない、もし私と違う答えが返ってきた場合ガッカリしてしまうかもしれないから。
それなのに顔はにやけそうだし、何だか胸の奥はぽかぽかと温かい。冷静でいようとする私を一輝さんがどんどん壊していくみたいで、どうすればいいのか分からない。
「期待に応えられるよう完璧な契約妻になるために努力していますので」
直接だったら上手く誤魔化せなかったかもしれない。メッセージのやり取りで良かったと思いながら、自分の本心を契約という言葉に隠した。