春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「はじめまして、二階堂 梓乃さん。私が……」
「タカミヤホールディングスの社長子息、高宮 一輝さんですよね。はじめまして、私が二階堂 梓乃です」
丁寧なあいさつも優しい微笑みも、本当は何の意味も無いんでしょう? ふわりとはにかんだ男性の言葉を遮るように早口で自己紹介を済ませる。
噂で聞いたイメージとは随分違う気がしたが、そんなのはよくある話できっと本性はとんでもない我儘御曹司に違いない。そう簡単に私は騙されないんだから。
大人しく黙っていう事を聞いているような妻がお望みなら、思いきりガッカリさせてやるわ。私は無駄にこの高宮 一輝という見合い相手に対抗心を燃やしていた。
私がどんな目で彼を見てるかなんて本人にもすぐに分かるはず、さあどうするのかしら?
「はい、一輝と呼んでください。私も梓乃さんとお呼びしますから、いいですよね?」
すぐに不快感でも露わにするかと思ったのに、私の喧嘩腰の態度などどこ吹く風のような顔で流してしまう。なんだかやりづらい、苦手なタイプかも……
そうは言っても、近い将来私の夫になる人なのだ。さっさと化けの皮をはがして対等な話を出来るようにしておきたい。
……そう思っていたのに。
「梓乃さんはまだお若いですから、本当にこんな中年とのお話を受けてもらえるとは思いませんでした」
「中年って、確か……三十八歳?」
そう言われて思わず顔を上げ、高宮さんの容姿をジロジロと眺めてしまう。スラッとした高い身長、優しげな弧を描くの口元に柔らかそうな黒髪。メガのの奥の瞳は穏やかな雰囲気を醸し出していた。
……確かに落ち着いてはいるがとても三十八歳、彼の言うような中年になんか見えない。