春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「そう、梓乃さんからすると十分オジサンでしょう? まあ……断られるのは覚悟しての結婚の申し込みだったんですけどね」
ふわりとした笑顔はどこか人懐っこさを感じる、それでいて落ち着いた雰囲気もあるとても不思議な人。私に断られる覚悟だと言いながら、その瞳の奥にはそれなりの自信が映って見える。
……何だか油断のならない人物、それが私の高宮 一輝に対する第一印象だった。
「それで、私を結婚相手に選んだ理由はなんですか? 一輝さんとなら姉の方が歳も近い釣り合うでしょう、それなのにどうして私を?」
「随分ハッキリと聞いてくるんですね、まあ気になるだろうとは思ってましたが」
ちょっと驚いたような表情を見せるが、本心なんて分からない。私よりずっと長く生きてきたこの人にそれくらいの顔を作るのは簡単な事でしょうから。
私が目を逸らさないでいると、一輝さんは私に近づいてそっと耳打ちをした。
「ここでは話しにくい、二人だけになれる場所に移動しませんか?」
「……分かりました。じゃあ、お任せします」
私がそう返事をすると彼は小さく頷き、お互いの両親が話すテーブルで何かを伝えるようなそぶりを見せる。嬉しそうに彼の肩を叩く私の父に頭を下げて、ゆっくりとした足取りでこちらへと戻ってくる。
「許可はもらいました。では行きましょうか」
そう言って笑う一輝さんは、やっぱり油断ならない相手に違いない。上手く丸め込まれないように気を付けなければ、と彼の後をついて行きながら気を引き締めていた。