春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
「いらっしゃいませ高宮様、こちらへどうぞ」
落ち着いた雰囲気のお店、ほっそりとした和服美人が個室へと案内してくれる。私達が席に着くとその女性はこちらを振り向いて私だけにニッコリと微笑んだ。
……気のせい、よね? ここに来るのは初めてのはずだから。
「いつものをお願いするね、それと彼女には何か甘い物を付けて」
そう言って注文を済ませる一輝さんに私は何も口出しはしなかった。先に甘い物と頼んだ時点で、私の好き嫌いはすでに把握しているのだと分かってしまったから。
そんな事までわざわざ調べてるなんて、この人は何を考えてるのかしら? まさか本当に私を見初めての結婚の申し込みだとでも言うの、そんな事を信じるほど私は可愛い女じゃない。
「あの、お話は……?」
「食べてからにしましょう、その方が落ち着いて話せますからね」
そう言われてはそれ以上急かすことも出来ず、私は並べられていくお料理を味わうことに集中することにした。一輝さんが言う通り釜飯は上品な味でとても美味しくて、デザートは私の好きなイチゴを使ったシャーベットとゼリーで頬が落ちるかと思うほどだった。
「お口に合ったみたいで良かったです」
「あ、はい。とても美味しくいただきました。本当に食事も雰囲気も素敵なお店ですね」