春色溺愛婚 〜歳上御曹司の溺愛で陰険お嬢様は乙女に変わる〜
器を下げてもらい、私と一輝さんは二人きりになる。手にしたお湯呑みに視線を落として、そのまま一輝さんからの言葉を待った。私を結婚相手に選んだ、その理由が話されるのを……
「私が梓乃さんに結婚を申し込んだ理由ですよね、知りたいのは」
「ええ、他にもありますが。まず一番の疑問はそれですね、このお話は私ではなく姉の百々菜でも良かった気がするので」
酷く我儘とはいえ姉の百々菜はかなりの美人で、取り巻きの男性がいるほどだ。そんな美しい姉を父もとても可愛がっている、それなのに地味な私が選ばれるなんてどう考えてもおかしかった。
父は残念そうだったけれど、この話を進めたい気持ちには変わりないようで私は今ここにいる。
「私が梓乃さんに好意を持っているとは考えないんですか?」
「有り得ません。私と一輝さんは初対面です、もしどこかでお会いしてるのなら私は忘れないはずですから」
こう見えて私は人の顔を覚えるのがとても得意だったりする、一輝さんは整った顔をしているし一度会ったら忘れない自信があった。
それにこんな平凡で陰険な私にこんな人が好意を持つなんて考えられない。
ならば答えは簡単だ。私と結婚することで一輝さんに何かしらのメリットがある、もしくはこの結婚に別の目的が存在するということに違いない。