冷え切った皮膚でも抱いといて

　落ち着いていて、冷静で、誰よりもクールで、自分を持っている一匹狼で。それにより近寄り難い印象を持たれがちだが、話せば意外と穏やかで、優しくて、のんびりとしていて。笑うことはほとんどなくても、彼の口から生み出される言葉に棘はなかった。

　だからこそ、酒に酔って理性をなくしていた同級生を蹴り飛ばした事実が、まだ少し信じられずにいる。何が彼を突き動かしたのか。まさか、俺のため、なんて思っている時点で自惚れのようなもので。じゃあ、俺を連れ出して、外を歩いて、指を絡めて。今のこの状況はどう説明すればいいのだろう。神崎も酔っているのだろうか。酒のせいで、俺との距離感を測れずにいるのだろうか。

　神崎の横顔を盗み見る。夜の世界に慣れつつある目で捉えた、俺が抱いている不安も緊張も感じ取れない神崎のその表情は、酔っているとは思えないほどに理性的だった。つまり彼は、酔った勢いで俺に接触しているわけじゃない。触れ方だって少しもいやらしくないことが、それを証明しているかのよう。