冷え切った皮膚でも抱いといて
俺を見つめる神崎は、何かを逡巡するように言葉を呑み、唇を引き結び、静かに瞬きを繰り返していた。悩んでいるような、言い淀んでいるような、その姿が珍しく感じる。神崎、と続く沈黙を破るように声をかけると、妙に熱っぽい濡れた双眸が再び瞬きをして。密かに惚れている彼と目が合っていることに胸が弾んだ。
秋月、と未だ迷いを捨て切れない様子で、柄にもなく縋るような声で、俺の名字を繰り返す神崎の手が、ほんの少し、意識しないと分からないくらい小さく、震えていることに気づく。緊張か、不安か、恐怖か。もしくは、それ以外の何かか。寒さによる震えとは、違う。神崎、と落ち着かせるように声を上げようとしたところで、高めていた勇気をやっぱりダメだと途中で捨て去るように、神崎は俺よりも早くに口火を切った。
「……サシ飲み、しない?」
「……え?」
酒。一緒に。短く伝えられた誘いの言葉に、思わず目を瞬かせてしまう。もっと別の何か、もっと重要な何か、それを言いたそうにしていたのに。やはり途中で勇気が潰えてしまったのだろうか。喉元まで出掛かっていた言葉を咄嗟に別の言葉に置き換えた様子で。神崎は俺に何を伝えたかったのだろう。
言い淀んだ神崎の心は読み取れないままだが、それを追及するのは野暮で、なんとなく違う気がして。俺は神崎の変化に気づかないふりをしながら、うん、いいよ、と迷うことなく二つ返事でサシ飲みを了承した。憂愁を帯びた顔で瞼を下ろして上げる神崎の手は、まだ、微かに、冷たく揺れる呼吸と共に、震えていた。
秋月、と未だ迷いを捨て切れない様子で、柄にもなく縋るような声で、俺の名字を繰り返す神崎の手が、ほんの少し、意識しないと分からないくらい小さく、震えていることに気づく。緊張か、不安か、恐怖か。もしくは、それ以外の何かか。寒さによる震えとは、違う。神崎、と落ち着かせるように声を上げようとしたところで、高めていた勇気をやっぱりダメだと途中で捨て去るように、神崎は俺よりも早くに口火を切った。
「……サシ飲み、しない?」
「……え?」
酒。一緒に。短く伝えられた誘いの言葉に、思わず目を瞬かせてしまう。もっと別の何か、もっと重要な何か、それを言いたそうにしていたのに。やはり途中で勇気が潰えてしまったのだろうか。喉元まで出掛かっていた言葉を咄嗟に別の言葉に置き換えた様子で。神崎は俺に何を伝えたかったのだろう。
言い淀んだ神崎の心は読み取れないままだが、それを追及するのは野暮で、なんとなく違う気がして。俺は神崎の変化に気づかないふりをしながら、うん、いいよ、と迷うことなく二つ返事でサシ飲みを了承した。憂愁を帯びた顔で瞼を下ろして上げる神崎の手は、まだ、微かに、冷たく揺れる呼吸と共に、震えていた。