冷え切った皮膚でも抱いといて
 恐らくその問いは、ずっと聞きたかったこと。聞きたくても、神崎なのに、周りに遠慮なんてしなさそうな神崎なのに、俺に気を遣ってなのか、聞かなかったのだろう、聞けなかったのだろう。だから今日、大人になって、酒の力を借りて、聞いた。アイスか、アイスじゃないか。

 高校生の時、男子の中で手の大きさを比べようというしょうもないことで盛り上がったことがあった。その妙な遊びを提案した人と一緒のグループに属していたわけではないのに、男子はみんな強制的に参加させられ、何が楽しいのか一人ずつ手を合わせては大きさを比べ、小さいだの大きいだの変わらないだのと大盛り上がり。

 そんな中、俺と手を重ねた人は全員、その興奮が冷めるかのように驚き、一度は飛び退くのだった。大きな理由としては、冷たすぎる、から。漏れなく神崎も、他の人みたいに大袈裟に驚きはしなかったが、冷たいと独り言のように口にしていた。対して俺は、神崎の手も含め、重ね合わせた全員の手のひらが一人残らず温かったことをよく覚えている。それが、自分の手が、いや、体温そのものが、他の人より極端に低いことの証明となった。自覚した瞬間でもあった。自分が、特殊体質であるアイスだと。それと同時に、もし神崎がジュースだったらどうしようという不安にも似た恐怖がむくむくと膨れ上がって。身動きが取れなくなった。
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