冷え切った皮膚でも抱いといて
「傷つけたら嫌だから、ゆっくり、我慢して、甘やかそうとしてたのに」

 もう、知らない。抵抗しても、やめない。悪いのは、挑発した秋月だから。全ての責任を俺に押し付けて。神崎は、ギリギリのところで堰き止めていた情欲を剥き出しにした。鍵を壊したことで、いや、俺が外させたことで、我慢していたという欲望が溢れ出す。青が多かった瞳の色が、滾るような赤に変わっていた。本能的な目。野生的な目。本気になった目。余裕のない目。

 先程よりも強引に塞がれた唇。上手く息が吸えない。吐けない。酸素が失われ、頭がぼんやりとし始める。それでも、そんな苦しさすら、快感に変わっていくようだった。神崎を受け入れ、求め、必死についていく。置いていかれないように、手を伸ばして、触れて、ついていく。神崎。神崎。神崎。頭の中は神崎でいっぱいで、彼の熱と甘さに溶かされ、理性なんてもう既に吹き飛んでいた。酒の一気飲みをしたからだろうか。堕ちるのが速い。

 絡み合う熱。求め合う体。俺はずっとこうしたかった。キスがしたかった。高校生の時からずっと。触れたくても、冷たすぎて火傷を負わせてしまうんじゃないか。触れてもらえないのは、冷たすぎるからだったんじゃないか。苦悩して、いつでも触れられる距離にいたのに踏み出せなくて。当然好きとは言えなくて。お互いに拗らせたまま、別れ、そして、再会。気持ちは冷めなかった。寧ろ情熱的な芽が顔を出し、神崎が欲しくてたまらなくなった。
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