冷え切った皮膚でも抱いといて
 神崎と俺の体躯はほとんど同じだからか、ちょうどいいサイズのその服を着て彼のいる一室へと向かう。他人の服、しかも好きな人の服を着ていることに若干の緊張を覚えながら閉まっていた扉を開けると、その音で俺に気づいた神崎が顔を上げた。目が合い、瞳がほんの僅か、柔らかくなる。それでも、拭い切れない切なさのようなものが見え隠れしていた。もしかしたら俺も、神崎と似たような目の色をしているのかもしれない。アイスが、ジュースが、お互いの行手を阻んでいるかのよう。

 ベッドを背もたれにカーペットの上で腰を落ち着かせている神崎は、テレビもつけていなければスマホの画面も見ていなかった。リモコンも彼のスマホも、机の上で鳴りを潜めている。結局買っただけでほとんど飲まなかった酎ハイは既にそこにはなくて。彼の手によって冷蔵庫に移動させられたのかもしれない。俺の飲みかけだったものまで処理してくれたらしく、机の上には物がほとんど置かれていなかった。すっきりしている。
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