嘘と、恋。
「もし、俺が居ない間にその男から連絡あっても、電話とか出たらダメだから。
LINEもブロックして」
そう言われて思い出したけど。
「私、スマホとか持ってない」
「あ、そっか。家出したんだっけ?
それで、スマホとか家に置いて来たって感じ?
そしたら、今日はあれだけど、明日にまりあちゃんに新しいスマホと、
着替えとか用意するね。
それで、いい?」
いい?と訊かれて、笑顔なのだけど有無を言わさない強さがあり、頷いてしまう。
「じゃあ、イイ子にしててね」
そう言って、子供にするみたいに私の頭を撫でて、
康生さんはこのマンションの部屋から出て行った。
康生さんが居なくなり、暫くすると、
私は今居るリビングの横の部屋の扉を開いた。
そこは寝室で。
セミダブルのベッドがある。
康生さんがとても親切なのは本当なのかもしれないけど。
きっと、康生さんも私にそういう事をするのだろう。
男の人なんて、そんなものだろう。
リビングの大きなテレビをつけると、夕方のニュースがやっていて。
S県で起きた殺人事件のニュースがやっていた。
それは、今日の午前2時頃。
アパートの一室で、そのアパートの部屋の住人の中年の女性と、その女性と交際していたと思われる男性が刺殺された、と。
悲鳴を聞いた同じアパートの住人が、警察に通報し、警察が駆け付けた頃には…。
犯人は、逃走中…。
不審な車が近くで目撃されていて…。
なんだか、それを見ていて、この世界の何処かではそんな物騒な事が起こっているのかと、
他人事のように感じた。
きっと、すぐにその犯人も捕まるだろう。