嘘と、恋。
「だって…。
康生さん、優しいから。
優し過ぎて。
なんでよく知らない私なんかに、こんなにしてくれるのかって」
「俺の無償の優しさが怖いの?」
そう訊かれ、私はそうなのか、と気付いた。
「俺が見返りを求めてまりあちゃんの事抱いたりした方が、まりあちゃんは気が楽なんだろうね」
そう言われ、確かにセイ君は私の事を抱いたりしたから、
だから、セイ君にはちょっとくらい面倒かけてもいいか、って気持ちになった。
「本当に、気にしなくていいよ。
初めに言ったけど、俺、男が女に暴力ってのが許せなくて。
そんな風に、彼氏から暴力振るわれているまりあちゃんが放っておけないだけだから」
そんな事を、初めに康生さんが言っていたのも覚えているけど。
私が納得していないのが伝わったのか、
康生さんは、ため息を吐くと口を開いた。
「俺の父親、よく母親に暴力振るってて。
物心付いた頃から、そんな光景をよく見ていて、刷り込まれてて。
それで、俺、本当に男が女に暴力振るうのが許せないんだよね」
先程よりも、それを聞いた今。
この人が、そんな私に優しくしてくれる理由に納得出来た。
「俺が小学一年の時ね、夜、母親はリビングでいつものように父親に殴られてて。
俺も、いつものように逃げるように自分の部屋に行って…。
そして、次の日いつものように朝起きてリビングに行くと、
母親はリビングで眠ってて…。
その横で、呆然として床に座ってる父親が居て…。
殺すつもりはなかったみたいだけど。
父親、母親の事、殺しちゃったみたいで」
康生さんの父親は、母親を殺した…。
それは、暴力で。
「だから、本当に男が女に暴力ってのが許せなくて」
さらに先程よりも、康生さんが私に優しくしてくれる理由が分かった。