嘘と、恋。
「やっぱり、俺は永倉の全てが嫌いだな。
永倉の顔、俺の父親に似てて…。
別に、それ程ソックリってわけでもないけど。
なんかアイツの顔を見てると、父親を思い出すんだよ」
さっき、康生さんがナガクラさんの顔が嫌いだと言っていたのは、そういう事か。
嫌いな奴に似ているから、と。
「康生さん、もうお父さんとは会っていないのですか?」
思い出す、というくらいだから、そうなのかもしれない。
警察に捕まってそれっきりなのかも。
「父親がムショから出て来て。
その時、もう俺はこの世界に入っていたのだけど。
警察から父親が出所するって聞いて迎えに行ったんだよね。
で、その後、父親を警察に知られないように殺して、見付からないように山に埋めて。
今もまだ埋まってんのかな?
今度一緒に、掘り返しに行く?」
この人は、父親を殺したのか…。
「あれ?まりあちゃん、ひいてる?」
そうクスクスと笑っていて。
笑っているけど…。
「康生さんは、本当にヤクザなんですか?」
本当にいい人だから。
「え?今さら、それ疑うの?」
そう言うと、康生さんはベッドから上半身を起こし、
着ていたロングティシャツを脱ぎ捨てた。
私に向けられた康生さんの背には、
今にも飛び出して来そうな鮮やかな龍が描かれている。
龍の刺青。
「これでも、まだ疑う?」
康生さんは脱いだロングティシャツを着る事はなく、
再び私の隣に寝転ぶ。
その時、ギュと私を抱き締めるようにして。
私は康生さんに腕枕され、額が康生さんの口元辺りに当たり、康生さんの温もりがダイレクトに私を包み込んでいる。
凄くドキドキとして、顔が熱くなる。