嘘と、恋。
「この事件、その殺された女の長女が犯人で逃げてるってパターンか、
もし、他に殺人犯が居るなら、その長女は連れ去られてとっくにそいつに殺されてんだろうね?」
康生さんは、問いかけるように私を見ている。
「康生さんは、どっちだと思います?」
「んー。
長女が殺って逃げてる」
「私もそう思います。
ただ、今康生さんが言ったように、犯人にその長女が連れ去られて、って可能性もあるのかーって…」
そういえば、現場付近で目撃されている白い不審な車。
その車の持ち主が、世間では犯人では?と思われているのかも。
「けど、じきに犯人捕まるでしょうね?
そうなれば、全てがハッキリとする」
もう、明日にでも捕まるかもしれない。
「だろうね。
あ、それより、まりあちゃん急いで出掛ける用意して。
モタモタしてたら、すぐ昼になっちゃうから」
「え、はい」
康生さんに言われ、私は急いで身支度を整えた。
康生さんもそうで、今日はスーツではなくて普段着で。
本当に、今日の康生さんは大学生に見えた。
「あれ?まだマスクするの?」
支度を終えてリビングに現れた私を見て、康生さんは首を傾げている。
外に出る時以外、このマンションの部屋に居る私はマスクを外していて。
もう、口の横の痣はほぼ消えているから。
「まりあちゃん、本当に花粉症だったんだ」
そう、笑っている。