嘘と、恋。
車で出掛ける、と、マンションの同じ敷地内の駐車場にある、康生さんの車へと乗り込んだ。
その康生さんの車は、名前は分からないけど、高そうで、白い。
「私、生まれて初めて外車に乗ります」
助手席に乗り込みそう言う私に、
「これ、外車じゃないよ。
俺、国産車が好きだから」
そう、康生さんは笑っていて。
「そうなんですね…」
高そうな車は、全部外車だと思っていた。
それもそうだし、ヤクザって黒いベンツに乗ってるイメージだったけど、
現実はそんな事ないのか。
「康生さん、手、大丈夫ですか?
運転出来ます?」
今も包帯で巻かれている、その左手。
「3割くらいは、動く。
この車オートマだから大丈夫」
本当に、大丈夫なのかな?と不安だけど。
康生さんはシートベルトをすると、特に問題なく、車を発進させた。
車に乗っていたのは、高速等も含め2時間強で。
その道中、それ程康生さんとは会話がなかった。
今までのように、それ程康生さんは私に話し掛けても来なくて。
もしかしたら、それ程康生さんはよくしゃべる方ではないのかな?
それとも、私に訊いてはいけない事を訊くのを避けているのか…。
だから、その道中はずっとカーラジオから流れて来る音楽を聴いていて。
特に会話はなくても、康生さんと過ごすこんな時間も、楽しいな、って思った。
そして、私は今後の事を、色々と考えた。