嘘と、恋。
『―――ほら、前に知り合いに頼まれて、あの子の保険入ったんだけどね。
死んだら400万くらい下りるみたいで。
だから、事故に見せ掛けて、殺しちゃおうかって。
それに、調べたら自殺でも下りるみたいだから、偽装してとか』
『それを俺に言うって、もしかしてお前の娘、俺に殺せって言ってんの?』
『保険金の受け取り人の母親の私が絶対一番怪しまれるじゃない。
だから、私じゃダメなの』
『でも、あの子の体で稼いでんじゃなかった?』
『そうなんだけど。
田中のオッサンロリコンだから。
段々とあの子、大人になって来たでしょ?だからもういいって』
『そいつ、どんだけ。
でも、あの子大人になって来たから、逆に不特定多数に売れんじゃん。
それに、もう完全に学校に行かせず、4月から工場で働かせるんだろ?
稼いでくれんじゃん』
『でも、もう嫌なのよ。
あの子がこの家に居るの。
陰気臭い顔してさ。別れた旦那にそっくりで。
本当に、死んでくんないかな?』
そう言って、アハハと母親は笑っていた。
襖の向こうで、どんな顔して話していたのかは知らないけど。
許せない…。
考えるよりも先に体が動いていて。
台所ヘ行き、包丁を掴むと。
それをしっかりと握り、母親の部屋の前に行き、
襖を開いた。
母親とその男は、裸で二人布団の上に居て。
二人共、凄く驚いて私を見ていたのを覚えている。
考える事もなく、私は男の首に包丁を突き刺していた。
それを引き抜くと、血が噴き出して。
母親は、悲鳴を上げていた。
それが煩くて、母親も―――…。