嘘と、恋。
「いいよ。
俺、本当にいい人だよね」
そう言った康生さんは、いつものように笑ってはいなかったけど。
私は横に居る康生さんの頬に右手を伸ばして触れると、
そっと自分の顔を近付けて、康生さんの唇に自分の唇を重ねた。
その感触はとても柔らかくて、温かくて。
唇を離すと、康生さんは私の顔を見て、ほんの少し笑ってくれた。
「まりあちゃんと出会ったのが、10年後だったなら、俺、惚れてただろうな。
まりあちゃんがもっと大人なら。
きっと、誰かを好きだと思うのって、こんな感じなんだろうね。
まりあちゃんに、触れたい、と思うから」
「10年?
5年後じゃダメなんですか?」
「俺、本当に永倉みたいにロリコンじゃないからね。
でも、10年後ならさらに俺もオッサンになってるから…。
と、なると、オッサンが初恋って、ちょっとキモいよね」
そう笑う康生さんに釣られて、私も笑った。
私はきっと、この人を好きになっていて。
これは、私にとって初恋。