嘘と、恋。
「今回の私のパターンって、康生さんにしたら、本当にやっかいですよね。
殺しても、その遺体を見付かるようにしないといけないし。
自殺じゃダメだし」
きっと、警察に捕まらないように、
康生さんは上手くやってくれる気はするけど。
「まりあちゃん。なるべく苦しまないように、殺してあげる。
膝ついて」
そう言われ、私は地面に膝を付く。
私の背後に、康生さんは立つ。
もしかしたら、背後から銃で撃たれたりするのかも、と思ったけど。
そうではなく。
ベルトを外すような、音がした。
「これで、吊り上げるように首を絞めてあげる。
すぐに意識が無くなると思うから」
その言葉が終わる頃、私の首にそのベルトが回される。
覚悟はしてるのに、恐怖で体が震えて、涙が浮かぶ。
死ぬのが、怖い。
本当ならこんな時、自分の犯した罪を悔い改めるのだろうけど。
「私、母親やその彼氏を殺して。
全然悪いと思ってなくて。
むしろ、スッキリしたくらい」
自分のした事が悪い事だと分かっているけど。
あの人達に、懺悔の気持ちは一切ない。
「そう。積年の恨みの方が重いのかもね」
クスクスと笑うから、その振動が私の首筋に触れているベルトに伝わっている。
「お父さんにも、こうやって頼まれました?
殺してくれ、って」
私の言葉に、動揺しているのがその空気で分かる。
「康生さん、お父さんの事嫌いだと言ってたけど。
殺したい程憎んでなさそうだったから」
それは、父親を殺した事を語る康生さんから、伝わって来た。
実際、母親を殺した私だから、分かるのかもしれないけど。
「俺の父親、弱い人間だったんだよ。
母親に対する暴力も、自分の自信の無さから来ているもので。
罪を償っても、人殺しとしてこのまま生きて行くのが怖いって」
「やっぱり、康生さんは優しいですね…」
「そう?
だけど、俺、殺さないでくれ、って泣いて頼んで来る人間も殺した事あるよ」
「でも、それは…。
何か康生さん的に、事情があったんじゃないですか?」
「どうだろ?」
そう、笑っている。