嘘と、恋。
「まりあちゃん、本当は俺。
あの寿司屋の時、まりあちゃんが家出してるって聞いて。
もし、まりあちゃんが誰からも捜して貰えない可哀想な子なら。
まりあちゃんの事、こっそり殺して見つからないように処理して。
まりあちゃんの戸籍を、売っちゃおうって思ってた」
その言葉に、思わず振り返ってしまいそうになるけど。
「普段、下の奴らに、樹海で自殺した奴捜させて、死んでるそいつらの身分証とか戸籍売ったりとか…。
まあ、そんな仕事もしててね。
まりあちゃんみたいに若い女の子の戸籍なんか、レアだからけっこうな値段が付くかなって…。
永倉みたいに、海外に売り飛ばすよりもずっと」
そう、クスクスと笑っている。
「当てが外れましたね?
私の戸籍…。
私の事、今警察が必死で捜してますもんね。
売るに、売れない」
「本当。
まりあちゃんには、けっこうお金使ったし、
左手まで犠牲にしたのに。
まあ、それは永倉が絡んで来て、俺もムキになったのもあるんだけど。
だから、左手力入らないから。
こっち、ベルトを口で噛んで引き上げるから。
だから、もう話さない」
私の首に通されたベルトが、私の首を締め付けて行く。
「―――はい。
康生さんが本当にいい人で、良かった。
康生さん、大好きですよ」
その言葉が私の口から溢れた時、
一瞬、私の首を締め上げているその力が緩んだけど。
次の瞬間、強く私の首を締め付けるように持ち上げて行く。
背を向けているからどんな顔をしていたのかは見えなかったけど。
話している途中から、康生さんが泣いている事は、気付いていた。