きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように


 今日は星絆と出掛ける日。

 星絆が、予定は私が立てておくね、と言ったきり教えてくれなかったのでどこに行くのかは分からないが、それも相まって楽しみが増していた。


 最近は、星絆との約束があったからか、容体も安定していた。

 「どうしても蒼来と行きたい場所があったんだ」

 そう言う星絆の目はこれまで私が見てきた星絆の表情の中で群を抜いて一番というほどに輝いていて、見るもの全てを魅了するようだ。

 私も初めて見る星絆に、気分が上がった。

 そして、晴天の下自転車を飛ばすこと数十分、最近出来たというカフェに着いた。

 どうやら開店直後で空いていたらしく、すぐに店内に案内してもらえた。


 古民家を改造して開業したというそのカフェは、天井の化粧材や欄干で飾られた照明で和を感じさせつつ、白を基調とした壁で現代風に仕上げた作りになっていた。

 店内では大きな窓から入る光、テラスからはカフェに隣接されたドッグラン等、幅広い客層から注目されるポイントが多々あった。
メニューを見て一番に満面の笑みが零れたのを身をもって感じる。

 「ここのフレンチトーストが凄く人気らしいの。それを聞いてすぐに、蒼来はフレンチトーストが好きだった気がして、一緒に来たいって思ったの」

 「ありがとう」

 星絆の言う通り、私はフレンチトーストが好物だ。

 カフェに行けば真っ先にメニューにあるかどうかを探すし、隣県にフレンチトースト専門店が出来た時は無理矢理時間を割いてまで足を運んだほどにその愛は大きい。 

 だから、星絆がこうしてこの場所に私を誘ってくれたことが嬉しかった。

 まだ序盤だが、久しぶりの外出が想像以上の幸せで溢れるような気がした。

 「お待たせしました」

 ビンテージ風の皿の上で踊る黄金色の厚切りフレンチトーストを見るや否や、恋に落ちるように心を奪われた。
 
 純白の雪に生クリームの上に添えられた緑。

 全てが私を虜にした。

 勿体なさそうにナイフを入れると、卵液が染み出てくる。

 まずはトッピングを付けることなく口に運ぶ。

 口の中で溶けるように広がるちょうどよい甘さで外はカリっとした触感だ。
 
 「美味しいね」

 「うん。今まで食べた中で一番かも」

 「奇遇だね、私も」

 2人で顔を見合わせ、クシャっと笑いあった。

< 32 / 91 >

この作品をシェア

pagetop