きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように
会計を済ませ、名残惜しく店を出る。
店の外にはランチタイムということもあり多くの客が長蛇の列を作っていた。
「次はどこに行くの?」
「どこにも行かないよ、今日はここだけ」
「服は買いに行かなくていいの?」
「うん。あれはカフェに連れ出すためだよ。驚かせたかったから」
そう言う星絆は無邪気な女の子、といった感じで思わず笑みが零れた。
「そっか。あのフレンチトースト、本当に美味しかった。流石星絆だね、分かってる」
「でしょ?絶対また行こうね」
「うん」
会話を終えると来た道を戻った。
身体で風を切って進む。
自転車なんて滅多に乗らないから、久しぶりのこの感覚に胸が躍る。
今の私を見られたら、こんなことで感動しているのか、と誰もが笑うだろうが、私にとってはこの何気ないひとつひとつが感動ものだった。
余韻に浸っていたのもあり、あっという間に分かれ道に着いた。
すると、急に星絆が止まった。
「ねぇ、また遊びに行こうよ。今度は本当に服を買いに行こう」
「そうだね。今日は誘ってくれてありがとう」
「こちらこそ、付き合ってくれてありがとう」
星絆に手を振り、背を向けた。
それから自転車をまた走らせた。
次の約束が楽しみで仕方がなかった。
どんな店に行ってどんな服を買うのだろうか。
考えれば考えるほど、胸が躍り、予定の話をしたくてたまらなくなる。
そんな時、突然意識が薄れて、ハンドルを握るどころか、バランスを取ることもできなくなる。
そして、そのままコンクリートに身体を打ち付けた。
閑静な住宅街に大きな音が響いた。
「蒼来?」
音に反応したのか、丁度正反対を走っていたはずの星絆の声がかすかに聞こえた。
そして、駆けつけて私の手を握り名前を呼び続けた。
「おい、大丈夫か」
そこに、たまたま通りかかった男性が駆け寄って私に声を掛けた。
意識が朦朧とする中、瞬時にその男性が透真くんだと声で気が付いた。
私は、透真くんが居てくれることで病院に着いてからのことも星絆のことも任せられる、と思い安心したところで、少しずつ身体が軽くなっていくのを感じた。