きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように
夏休み最終日に私は退院した。
その時に初めて余命宣告を受けた。
どうやら私に残された時間はあと二か月らしい。
机と椅子とホワイトボードのみが置かれている閑散とした面談室で顔色を失った二人と冷静を装い事実を淡々と述べる一人が現実と向き合っていた。
私は絶望を味わうと同時に、一瞬ホッと気が抜けるような思いをした自分に気が付く。
生きるということは確かに幸せを味わうことのできる素晴らしいことだ。
しかし、夢見病を患ってからは日頃の幸せでは到底打ち消すことができないほどの過酷な試練と何度も向き合わざるを得ない状況に立ち会ってきた。
それからだった、私が生きることを苦だと認識したのは。
夏休み最終日に退院したこともあり、案の定課題を全て終えることは出来なかったが、担任に事情を話すと、ゆっくりでいいから、と許しを得た。
加えて、その他の教科担任にも事情を説明してくれるようだった。
夏課題は七月中に終わらせているし、毎日の提出物も含めて、これまで課題未提出になったことは無かったから名簿に提出者をチェックする人の視線を感じた。
夏休みが明けると、クラスどころか学校全体がお葬式ムードで学校に来るだけで関係のない私まで余計にメンタルをやられる。
「そういえば透真が休みって珍しくない?」
星絆に言われて思い返してみる。
一学期は関わりがないどころか存在をそう認識してこなかったためによく分からない。
でも、確かに透真くんは学校を休むことが稀だったような気もする。
それよりも星絆が透真くんのことを呼び捨てでしていることが不思議でならなかった私は、それからも話し続ける星絆の話は一向に頭に入ってこなかった。
「星絆は透真くんとどういう関係なの?」
言ってなかったっけ、とでも言うように目を丸くした後、星絆はまた口を開いた。
「なんて言えばいいんだろうね、隠れ友人ってやつ?」
星絆は首をかしげながら言葉を選ぶようにそう言った。
私はその例えが面白くて、思わず笑ってしまいそうだったがそんな雰囲気ではなかったために必死で堪える。
それからその話を詳しく聞くと、どうやら小学生の頃から今まで何度も同じクラスになり、親しい仲だったが、一度、少し話していた時に、付き合っていると噂されたことがあったらしい。
とはいえ、全くもってそんな関係ではなかったようで、それ以来誤解を避けるために公の場では最低限しか話さなくなったというが、その裏では実は親しい友人の一人だったらしい。
私は星絆との付き合いは長いとはいえ、その噂を聞いたことが無かった。
鈍感なのか周囲に興味がないのか、それは分からないがおそらく後者のような気がする。
だからどうした、という話だが。
私は透真くんのことを心配しつつ、彼に言い放ってしまったことを後悔していた。
私の発言が原因で学校に来ていないとは思えなかったが、少なからず彼を傷つけているだろうから一日でも早く謝りたかった。
ただ、連絡先を持っていなかった私には伝える手段がなく、今の私にはどうすることもできなかった。