きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように
今日は先日の検査の結果が出たということで通院し、その帰りに屋上に寄り道をした。
前回、ここを見下ろして、飛び降りを考えた日から、私は変わった。
今は生きたくて仕方がなかった。
いつ倒れるか、いつ死ぬかも分からない。未練を残してこの世界と永遠の別れを迎えるかもしれない。
成仏できなかったらどうしようか、とか、大切な人との最後の会話が今日になったらどうしようか、とか。
相変わらずそんなことばかり考えてしまう自分も心のどこかにはいる。
だけど、それは人間誰しもが同様で、もしかしたら明日事故や事件に巻き込まれて思わぬ形で命を落とすかもしれない。
誰しもが持つその確率を、私は少しだけ高めて、これまでもこれからも死の恐怖と闘いながら生きるだけだ。
それに、夢見病を言い訳にして自分の人生から目を背けてはそれこそ病の思う壺だ。
だから、尚更、今は生きたくて仕方がない。
「よくここで会うよな」
振り返ると、そこには透真くんの姿があった。
「そうだね」
私はそう返すだけで胸が締め付けられた。
明らかに笑顔の消えた透真くんを前にして、私が口を出せるような立場でも状況でもないような気がした。
透真くんは夢見病の進行具合は同じながらも、私よりも発症が遅いがゆえに、症状は私よりも軽かった。
だが、今日はそうは言っていられないような状態であることを透真くんの顔が表していた。
「俺、また余命宣告を受けたんだ。何回受けてもつらいもんなんだな」
なんとなく察していたけれど、透真くんの口から聞くと、辛さが倍増した。
こんな気持ちで透真くんも私の話を聞いてくれていたのかと思うと、申し訳ない気持ちと力になりたいという気持ちが湧いてきた。
「透真くんはまだ夢を諦めていないよね」
「そう言えたら良かったんだけどね」
彼はそう言って下を向いた。
これが透真くんの口から聞いた二度目の弱音だった。
いつも強気で居る彼がここまで落ち込んでいる姿を見ると、私は居ても立っても居られなくなった。
「ねぇ、もしよかったら私と時間を共有してもらえないかな?」
私がそう言うと透真くんは笑顔を見せた。
「いいね。俺、その話に乗るよ」
「本当?」
「うん、楽しそうだから」
約束を交わすことに成功したとはいえ、更に重要な、どこに行くか、という問題が頭を悩ませた。
いくら行きたいところはあっても、お互いの身体では行ける場所が限られる。
万が一にも備えなければならないため、そう遠くへは行けない。
その面を考慮すると、近場という選択肢しか残らないのだけど、そうはいっても良い案が見つからない。
結局すぐには見つからず、思いついたら連絡をとることにして、帰宅することにした。
別れ際に大きく手を振ると、彼は照れながら手を振り返した。
それから、前を向いて歩き出した。
私の人生はまだ始まったばかりだ、との決意を胸に。