きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように
ここ数日は起きていることが稀とも言えるほどに夢に身体を乗っ取られていた。
それでも、まだたしかに生きていた。
私の心臓は最期に向けて力を振り絞って動いていた。
「そうだ、これを買ってみたんだ」
父が持っていた紙袋から取り出したのは、夏の夜空に浮かぶ花火だった。
3つの花火が大きく咲き、周りの小さな花火がそれらを引き立てていた。
どうやらそれは押し花で作られているらしい。
それも、あの商店街の店のもののようだった。
「俺にはよくわからなかったから店員さんにおすすめを聞いたんだけど……」
作品をじっくり見てみると店員が作ったようには見えなかった。
花はところどころ欠けているし、商品と比べると花の配置のバランスが劣っているし。
とはいえ、それに自然と愛着が湧くのは、それを作った人がおそらく父だからだろう。
「作ったの?」
父は頭を掻きながら、あぁ、と言った。
「不器用だから上手くは出来なかったけど」
完成形が分からないというものも関係しているだろうが、私にはこれが完璧なものにしか見えなかった。
「ありがとう」
調子が悪く、あまり多くは話せないけれど、それだけはどうしても言っておきたかった。
最近は父も星絆も、頻繁に病室を出入りするようになった。
おそらく、もう私は長くないのだと思う。
それで、ひとつでも多くの思い出を作ろうと必死なのだろう。
寂しい反面、その思いには嬉しく思った。