きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように
世界に果てはない。
きっと、これは透真くんの思いつきの一言だった。
だが、その後で意味を持ち始めたのだろう。
「私、あの意味がわかったような気がするんだ」
今日は公園で夜空を見上げていた。
はくちょう座が今日も輝きを放っている。
隣には透真くんの姿があった。
あの日みたいに塀の上に腰をかけて、身体を寄せ合う。
時折、2人に吹き込む風に冷やされて、冷静に事に向き合わせようとさせられているみたいだ。
「そうか、よかった。蒼来なら気付いてくれると信じていた」
「うん、私も気付けてよかった」
「ね?俺の言ったことに深い意味なんてなかったでしょ?」
「いや、あったよ」
「え?」
透真くんは、これには目を丸くしたまま動けずにいた。
言った本人よりも深読みをして捉えていると思うと、驚きや喜びよりも恥ずかしさが勝ってしまう。
透真くん、私はわかったよ。
私の導き出した答えが正解かはわからないけど、正解だよ、と言ってくれるのを待っているね。
まずは、私の生きる理由にするために、世界の果て探しを遺書に書いてくれたんだよね。
おかげでちゃんと生きられたよ。
生きる意味を、目的をありがとう。
私は透真くんのおかげで今日まで幸せだった。
「恥ずかしいしそっちに行ってから言うね」
「なんだよそれ」
「いいでしょ。これが私の最後のわがまま」
「それはずるい」
「ずるくないよ、だって本当だもん」
「わかった。じゃあ待ってるね」
「うん」
あともうひとつ。
透真くんが言いたかったこと。
世界の果てに行きたい、の裏に隠した本心。
世界に果てはない。
でも、自分の人生における果ては誰にでもある。
夢見病というこの狭い世界で、そして、自分たちの人生という狭い世界で2人は出会い、時間を共にしてきた。
私たちの住む世界は、果てかもしれない。落ちこぼれかもしれない。
でも、それが結んだ幸せをなかったことにはしたくない。
私が生きた証であり、透真くんと生きた証でもあるから。
世界の果てに行きたい。
それは私もだよ。
透真くんと一緒に、世界の果てを探したい。
ずっと2人で果てで生きていたい。
透真くんとなら、果て、なんて気にならないほどの日々を過ごせる気がするんだ。
もう時間はないけど、これからも思い出は作り続けられる。
今、透真くんが羽を休めているその世界でなら。
今からだって遅くない。
だから、もう少しだけ待っていて。
あと、もう少しだけ。