君の奏でる恋の音色
「え、ちょはぁああ?!」
 私はこの世の終わりかのような声で叫んだ。
 蒼君が実験の開始早々やらかした、というべきだろうか。
「水上置換法だから水槽の水を用意しておいてって言ったじゃん、その間蒼君何してたの?」
 蒼君は何でもなかったかのように青首をした。
「あぁ、これじゃあ気体漏れちゃうね」
 七実ちゃんも腰に手を当て首を横に振った。
 今この瞬間にも、この物質から発生した酸素は教室中に広がっているだろう。
「いいじゃん、人がいっぱいいてどっちにしろ二酸化炭素ばっかになってたわけで俺たちはみんなに酸素を供給してるわけでしょ?な、白石」
 同意を求められた白石君は苦笑いを繰り広げ、若干蒼君から視線をそらした。私は空っぽの水槽をがっちり掴み眉間にしわを寄せた。
 それから一度ガスバーナーの火を消し、もう一度やりなおすことになった。



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