お館様の番選び
「…あのね。獣人が完全な人間になる為には、獣人のもつ獣性を全て消さなくてはならない。」

「それは獣人にとって本来の状態に逆らうということでとても危険なことなんだよ。」

「完全な獣になるのも同じだ。だから、よっぽどの事情でなければ僕たち一族もその力は使わない。」

わたしの願いはよっぽどの事情には当たらないと言われてるみたいで、わたしはしゅんっとなった。

「人間にならないとなんでダメなの?」

それは、番という存在に縛られずに自由に生きていけるからで…

「獣人の町を出ないとダメなの?」

それは、この町にいる限り自分の番を探してしまうからで…

「番以外の人と家庭を築いている人はたくさんいるよ。」

でも、家庭を持ったあとで番に出会ってしまったらと思うと出来ないわけで…

「…じゃあ僕とは…どう?」

…いや、お館様の一族は番同士でないと子どもが出来ないから、それはちょっと…
って!

「えっ!え゛ぇぇぇっ!」

思ったより大きな声が出て、その声にさらに驚いてしまった。

朧も姿勢はそのままだが、目だけ大きく見開いている。
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