お館様の番選び
「ちょっと、やめてよ。…からかうの。」

「いや。僕もまだ番がいないし…あかりとなら…いいよ。……どう?」

「どう?って。あんたまだ高校生でしょ?」

「これから番に出会う可能性はいくらだってあるよ?」

「それにお館様になる予定の人が何言ってんの?」

いつものようにわたしの言葉は小言じみていく。

「そんな冗談いいから。もっと番選び、頑張ってよ。」

「お館様の一族は番じゃないと子どもが出来ないのはわたしたち獣人の常識なんだからね?」

「それでなくても、子どもの出来にくい一族なのに……。」

そこまで言ってハッとした。うわっ!言いすぎた…。

わたしたち獣人は同族の間で番となり、また番ではなくとも、同族であれば家庭を持ち、子どもをもうけることが出来るし、一度にたくさんの子どもが生まれてくる。

お館様の一族は全ての生き物の遺伝子をもっているので、全ての獣人族の中から番を選ぶことが出来るが、番でないと子どもが出来無いうえに、番であっても子どもが出来にくく、出来たとしても一度の妊娠で生まれてくるのは一人の為、お館様の一族はわたしたち獣人に比べ数が少ないのだ。

少ないうえにそうやって生まれてきた子どもでも男の子にしかその力が引き続がれないのも獣人たちの憂いのひとつになっていた。
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