お館様の番選び
生まれた時から、朧はわたしたち裾野家の兄弟と一緒に育った。

特にわたしの後をずっとついてまわるような子どもだった。

わたしの姿が見えないと泣き叫んで、お館様やお館様の番様を困らせていた。

「やっぱり、朧はあかりちゃんじゃないと駄目ね。」

番様にそう言われて、裾野家の娘として誇らしかったし、両親の仕事を手伝えてることに喜び感じ、ますます朧の世話をするようになっていた。

朧の変化にふと気が付いたのは、いつの頃だったか?

朧はわたしたち兄弟と一緒に御神体の山を流れる川で遊んでいた。

とても暑い日で狸の獣型獣人の兄弟たちは全身を覆う体毛のせいで夏バテ気味だった。

川で水浴びをさせ涼もうと、スカートの裾を太もものあたりまでたくしあげている時だった。

同じように狸型獣人の妹を両手抱えて、川の中で遊んでいた朧がわたしの姿を見て、さっと目を反らしたのだ。
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