お館様の番選び

門から屋敷まで続く石畳に躓かないよう気を付けて歩くとこれまた立派な玄関が見える。

わたしはいつものように屋敷をぐるっとまわり、勝手口から屋敷の中に入った。

「ん～。いい匂い。」
「あら。あかり。おかえり。」

勝手口から入るとすぐに台所になっていて、そこには夕食の準備でバタバタと動きまわっている母と使用人達の姿があった。

母はちょっと手を止め、目だけこちらに向けてニコッと笑うと、すぐに手元に視線を戻し、調理の指示を出しながら、テキパキと出来上がった料理を盛り付けていく。

母はこの家の家事全般を任されているだけあって、すごくパワフルな人だ。
見た目はとても小さくころっと丸っこくて可愛らしいのにどこにそんなエネルギーがあるのか昔から不思議だった。

「朧様のところへは行ったの？」
「ん～？これからっ！」
と言いつつ、お皿に盛られたおかずを一口ペロリ。

「あかりっ！」