お館様の番選び
父の言葉は僕にはまだ理解できないことも多い。

それに僕は父のように一族の力をまだ上手くは使えなかった。

でも……でも今…あかりをなんとか出来るのは僕しかいない。

僕は自分の手首に思い切り噛み付いた。

あかりの口に手首を当て、そこから流れる血を含ませる。

「あかりっ!息をしてっ!…忘れろっ!起こった事全部!不安なこと全部っ!忘れたいと思ってること全部っ!何もなかったんだっ!!あかりは何もしてないっ!!忘れろっ……忘れろっ……忘れろっ……」

僕は必死に願い続けた……。

「……これは、一体……。」

朝になって、満月の夜の巡回から戻った父は、僕たちの姿を見て、一瞬絶句した。

あかりは今、僕の腕の中で静かに眠っている。

父は部屋中に満ちている番達の匂いに全てを悟ったようだ。

「そうか。……朧、守れるか?」

何を言われたか分かった。

「はい。もちろんです。」

あかりは僕が守る。誰にも傷つけさせない。

僕の大切な番だ。
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