お館様の番選び
台所からお館様の仕事部屋の前までくると、中に向かって声を掛けた。
「朧様。あかりです。只今戻りました。」
「おかえり。入っていいよ。」
部屋の中から、艶のある声が聞こえてきて、わたしは襖をそっと開けた。
「なっ?!」
お館様の仕事部屋には沢山のパソコンやその周辺機器、書籍等がずらーっと部屋を占領し、なかなかな威圧感を感じる部屋だが、驚いたのはそれにではない。
椅子に座る朧様の膝の上で、ぐったりと正体をなくして仰向けになっている狸と泣きながら狸を取り戻そうと朧様と攻防を繰り返している弟の光の姿を目にしてしまったからだ。
「朧ー!あんた蛍に何してくれたのよー!」
「わーん。蛍がー。朧様のばかー!」
わたしは朧をキッと睨んで、膝の上でぐでっとなっている狸を取り戻した。
「力の加減も出来ないのに、蛍をその手で撫でまわすのは止めてっていつも言ってるじゃないっ!」
そうこの狸は私の可愛い妹の蛍で、泣いている弟の光の頭にも丸い小さな獣の耳がピコピコと動いている。
完全な人型をとっているが、わたしも狸族の一人だ。
「朧様。あかりです。只今戻りました。」
「おかえり。入っていいよ。」
部屋の中から、艶のある声が聞こえてきて、わたしは襖をそっと開けた。
「なっ?!」
お館様の仕事部屋には沢山のパソコンやその周辺機器、書籍等がずらーっと部屋を占領し、なかなかな威圧感を感じる部屋だが、驚いたのはそれにではない。
椅子に座る朧様の膝の上で、ぐったりと正体をなくして仰向けになっている狸と泣きながら狸を取り戻そうと朧様と攻防を繰り返している弟の光の姿を目にしてしまったからだ。
「朧ー!あんた蛍に何してくれたのよー!」
「わーん。蛍がー。朧様のばかー!」
わたしは朧をキッと睨んで、膝の上でぐでっとなっている狸を取り戻した。
「力の加減も出来ないのに、蛍をその手で撫でまわすのは止めてっていつも言ってるじゃないっ!」
そうこの狸は私の可愛い妹の蛍で、泣いている弟の光の頭にも丸い小さな獣の耳がピコピコと動いている。
完全な人型をとっているが、わたしも狸族の一人だ。