お館様の番選び
母と廊下でばったり会い、その流れであかりの新しい部屋に先に案内することになった。

「…あかり。こっちだよ。」とあかりの手を取ろうとしたが、一度頭に浮かんだ疑問の答えを知るのが怖くて、出した手を引っ込める。

それなのに、あかりは…お互いの背の高さを比べて、僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でまわす。

あかりに触れられた感触に僕の肌は全身粟立つ。

それに、見えるところの傷は全部治ったと思っていたのに、耳の後ろに痣が残っていたのか、あかりが近くまで寄ってきて僕の首筋をじっと覗きこんだ。

あかりの吐く息が首筋にかかり、おかしくなりそうだ。

あかりは何も感じないのか……?

あの日僕は何を願った?

あの日僕は必死にあかりの無事を願っただけだ。

忘れろと何もかも忘れてしまえと…………
まさかっ?

僕の番であることも忘れさせてしまったと言うのか……最悪のことばかり頭を過る。

「…ここがあかりの部屋だよ。」

あかりの部屋は僕の部屋の隣に用意した。

僕の側近としていつでも動けるようにだが、僕があかりを守る為でもある。

たが今は早く一人になりたかった。

今の状況を整理したい。なにか解決法はないか探りたい。

「…僕の部屋はここだから…。」

と部屋の扉を閉めようとすると、あかりは体を部屋にねじ込むようにして入ってきたんだ。
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