お館様の番選び
朧はこのお屋敷の当主であるお館様の息子で次代の「お館様」だ。
次代の「お館様」である朧様にわたしは側近として仕えている。
黒く艶のある髪をさらっと耳にかけ、前髪の下から覗く切れ長の目の中の琥珀色の瞳が愉しそうにこちらを見ていた。
通った鼻筋と薄いが妖艶な唇を手で覆い、困ったような風を装っているこの恐ろしいほど美しい人は、この世の全ての生き物を魅了し、皆から愛される存在………………………。
………だが、小さい頃から一緒に育ち、わたしの後ろに隠れて泣いていた6つ下のこいつは、わたしからしてみたら弟のようなもんなのだっ。
「あー。ごめん。あんまりにも触り心地がよくて……。つい…。」
謝りながらもその手はもふもふもふもふと止まらない。
「ついって、あんたねっ!」
「…蛍が嫌がるなら止めるけど。蛍、嬉しそうだよ?」
「えへへへへ/// 。お姉ちゃん~。おかえり~///。」
ぐっ。そうなのだ。このぐでっとした狸は具合が悪い訳ではない。
ただ、次代のお館様である朧の魅了の手で撫でられ幸福感で酔っているだけなのだ。
朧はもうすぐ18歳になり成人を迎える。最近は「お館様」としての仕事を当主である父親から少しずつ引き継いでいるところだが、お館様としての力もまだまだ不安定な若輩者だ。
魅了の手もその力のひとつだが、いまだその力を上手く扱えないため、ぐで狸が出来上がったのだった。
下手したら廃人…いや廃狸にされていたかもしれない。
次代の「お館様」である朧様にわたしは側近として仕えている。
黒く艶のある髪をさらっと耳にかけ、前髪の下から覗く切れ長の目の中の琥珀色の瞳が愉しそうにこちらを見ていた。
通った鼻筋と薄いが妖艶な唇を手で覆い、困ったような風を装っているこの恐ろしいほど美しい人は、この世の全ての生き物を魅了し、皆から愛される存在………………………。
………だが、小さい頃から一緒に育ち、わたしの後ろに隠れて泣いていた6つ下のこいつは、わたしからしてみたら弟のようなもんなのだっ。
「あー。ごめん。あんまりにも触り心地がよくて……。つい…。」
謝りながらもその手はもふもふもふもふと止まらない。
「ついって、あんたねっ!」
「…蛍が嫌がるなら止めるけど。蛍、嬉しそうだよ?」
「えへへへへ/// 。お姉ちゃん~。おかえり~///。」
ぐっ。そうなのだ。このぐでっとした狸は具合が悪い訳ではない。
ただ、次代のお館様である朧の魅了の手で撫でられ幸福感で酔っているだけなのだ。
朧はもうすぐ18歳になり成人を迎える。最近は「お館様」としての仕事を当主である父親から少しずつ引き継いでいるところだが、お館様としての力もまだまだ不安定な若輩者だ。
魅了の手もその力のひとつだが、いまだその力を上手く扱えないため、ぐで狸が出来上がったのだった。
下手したら廃人…いや廃狸にされていたかもしれない。