お館様の番選び
わたしたちは狸型獣人の一族で昔からこの辺りを治めるお館様一族にお仕えしていた。

わたしの父は狸型獣人族の長であり、このお屋敷の当主であるお館様の側近でもある。

わたしたち一族は、族長である父を筆頭に代々のお館様の身の回りのお世話をしてきた。

仕えているもののほとんどが狸族でその中でも、わたしたち裾野家が中心となってこのお屋敷のお館様一族を支えているのだ。

そんなわたしたちの妹に手を出すとは…。

「そんな、手を出すって…人聞きの悪い…。」

あら。声に出ていたらしい。ふんっ。

「あかりも光も、撫でたげようか？そんな悪いもんじ…ゃ…。あれっ？」

一瞬で廊下まで避難したわたしたち姉弟は襖の陰から朧様をじと目で見ていた。
ガクガクブルブル襖が揺れる音が凄まじい。わたしたち狸族はすごく臆病なのだ。

「はぁ。あかり。何か報告があるんじゃないの？」

そうだった。気持ちを仕事モードに切り替える。
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