ただ、まっすぐ君を想う。
「雛、年越し二年参り行くの?」
ポテトをケチャップにつけながら
凰ちゃんが言った
「んー…
まだちゃんと約束してないけど
友達と行くよ」
「そっか…」
「凰ちゃん、お正月もこっちにいれる?」
「んー…まだいつ帰るとか決めてないけど…」
「休み長いんだもんね
いい会社だね
私も卒業したらそんな会社に務めたいな」
「雛は、休みたいだけだろ」
「うん、ずっと休みでもいい」
「若いんだからさ
もっと夢とかないの?
進学しないにしても
そろそろ進路決めなきゃだろ」
「んー…」
私だって
何も考えてないわけじゃない
「うちの会社
家庭がある人には最高なんだけどな…
家族サービス優先だし
同期はみんな結婚したからな…」
「そーなんだ」
凰ちゃんが結婚したら
私
「凰ちゃん…」
「ん?なに?」
凰ちゃんも
結婚するの?
「んーん…なんでもない
あ、ケチャップたりる?
私、もらって来ようか?」
出てこようとした言葉を
ジュースで流し込んだ
「いや…もぉいいかな…」
気付いたら
トレーの上のポテトは残り少なかった
私が食べて
ジュースを飲んで
私が食べて
凰ちゃんが食べて
私が食べて
私が食べて
最後の1本
「最後、凰ちゃんどーぞ!」
大人になったって思われたかった
「雛、食べたいんだろ」
うん…
「んーん…私いっぱい食べたから、大丈夫」
ジュースでごまかした
ホントは食べたい
ジュースのストローを噛んだ
「じゃあ…」
凰ちゃんは遠慮なく
最後のポテトを口に運んだ
私、大人!
ポテトが凰ちゃんの唇で止まった
ん?
「雛、ホントは食べたいんだろ」
え、そんな顔してた?
「ん…うん…」
負けた
「こんなことで雛に恨まれたくないからね
ハイ…」
凰ちゃんの唇の前から
私の口の前にポテトが移動した
「あ、ありがと…」
ポテトの誘惑に負けて
口を開けてしまった
でも
まだ負けたくない気持ちがあった
「やっぱり…はんぶんこ…しよ…」
少しでも大人になったって
凰ちゃんに認めてほしかった
口にポテトを咥えたまま言った
「雛がそんなに言うなら…」
凰ちゃんが
私の口から出てる半分を
噛じった
ん…
今
触れた?
触れてないよね?
触れてたら
キス
だよ
「ありがと
雛、少し大人になったじゃん」
「ん…うん…」
ドキドキして
口の中にあるポテトが
呑み込めなかった
きっと私
ケチャップみたいに
赤い
「食べ終わったし、行こうか…」
凰ちゃんが
トレーを持って
席を立った
凰ちゃんの後を
慌てて追い掛けた
学生がいっぱいの店内
誰か見てたかな?
私と
凰ちゃんが
キスしたの
キスじゃない!
触れてないもん