ただ、まっすぐ君を想う。
「あ、雛…おかえり」
「うん、ただいま」
学校の補習が終わってから
凰ちゃんの家に寄った
いつもの凰ちゃん
やっぱり
昨日は酔ってたんだ
もぉきっと忘れてる
「雛、制服じゃん
学校行ってきたの?」
「うん、今日から補習」
「補習とか、懐かしいな…」
「進学しないから勉強しても意味ないのに…
はー…学校自体意味ない」
「んー…オレもそぉ思ったことあるけど
意味のないことなんてないんだよ
雛も10年ぐらいしたらわかるよ
まぁ、頑張れよ」
「んー…」
「って…
上下スウェットのオジサンに言われても
ぜんぜんピンとこないよな」
凰ちゃんが
頭をかきながら言った
上下スウェットでも
凰ちゃんは
オジサンなんかじゃなくて
すごく
カッコいいよ
凰ちゃんが学校にいてくれたら
きっと
学校に行く意味があるのにな
いくら思っても
叶わない
「雛もコーヒー飲む?
寒かっただろ
あ、飲めないんだっけ?
…
ジュース…ないや…
ここ、大人しかいないからジュースない
コンビニで買って来ようか?」
凰ちゃんが
冷蔵庫の扉から顔を覗かせて言った
「じゃあ、コーヒー飲む」
「無理しなくていいよ」
「無理してない」
無理した
子供とか思われたくないって思っても
所詮子供だけど
「その制服もオレの時と変わってないんだ
雛、よく似合ってるじゃん」
「懐かしい?
凰ちゃんもまた着たい?」
「オレはさすがにもぉ着ないけど…
…
雛、愛に似てきたな…って…
高校の時の愛思い出した」
「そぉ?」
あまり
嬉しくなかった
お姉ちゃんは
いいよね
凰ちゃんと
ずっと一緒だった
私は
ずっと一緒になれない
お姉ちゃんと私
似てくるわけないよ
だって
血繋がってないもん
「雛、かわいいな…」
凰ちゃんが
私の頭を撫でた
凰ちゃん
無理に私とお姉ちゃん
重ねないでよ
お姉ちゃんは美人だけど
私はチビだよ
「ヤダ!やめて!」
「あ!アチ!」
咄嗟に凰ちゃんの手をはらったら
反対の手に持ってたコーヒーが溢れた
「凰ちゃん、ごめん!」
「雛、かかんなかった?
大丈夫?」
「うん、私は大丈夫
凰ちゃん、手、火傷してない?」
「火傷したかもな…
女子高生に手を出した罰
ハハハ…もぉ出しません
…
ごめんな…
雛がかわいいな…って思って、つい…
オジサンだよな、そーゆーところも…」
凰ちゃんが
溢れたコーヒーを拭きながら言った
「凰ちゃん、先に手冷した方がいいよ!
水で冷やして!早く!
少しでも早く冷した方がいいから…」
凰ちゃんの手を引っ張って
キッチンの水で冷した
「凰ちゃん、痛くない?
熱かったよね…ごめんね…」
「雛、心配してくれてるの?」
「うん、心配だよ
だって、私のせいで…
こーやってすぐに冷やせば
少しは水膨れにもなりにくいし
痕も残らない」
「へー…詳しいじゃん、雛」
「うん、私、保健委員でね
友達が火傷した時、保健室連れて行ったら
保健室の先生が言ってたの」
「雛、ちゃんと学校で学んでんじゃん」
「まぁね…」
「そーゆーことだよ」
「ん?」
「無駄じゃないんだよ
ちょっとわかった?」
「そっか…
ちょっとわかったかも…」
水が流れる音
凰ちゃんの大きい手
男の人の手
私の小さい手
子供の手
やっぱり
差を感じる
凰ちゃんの
大人の男の人の匂い
ドキドキする
「ごめんね、凰ちゃん、ホントに…」
「いいって…
もし痕になったら、責任とってもらうし…」
「え?」
凰ちゃんの手から
凰ちゃんの顔に視線を移したら
目が合った
昨日キスされたことを思い出した
咄嗟に
凰ちゃんの手を離した
「あ、ごめん…あの…」
昨日のキスも
ただかわいいな…って
そんな気持ちだったのかな?
それとも
私とお姉ちゃん重ねて
キスした?
「雛、ありがと
もぉ大丈夫そう
…
オレって女子高生に嫌われるタイプだよな
キモい!とか言われんだろうな
ホント、オジサンになるとヤダよな
オレもオジサンになりたくて
なってるわけじゃ…
…
あ…雛の手真っ赤じゃん
冷たかっただろ」
凰ちゃんの手が
私の手を包んだ
「あ…またキモい?
ごめん
今のは、そーゆー気はなくて…」
凰ちゃんの手が離れて
代わりにタオルを渡された
「なんか、久々雛に会ったら
いろいろ成長してて…
あ、コレも別に変な意味じゃなくて…
…
なんかオジサンが言うと
全部キモく感じるな…」
「凰ちゃんは、オジサンじゃないし
キモくなんてないよ」
「なら、よかった
…
手、まだ冷たい?」
「うん、冷たい」
凰ちゃんの前に手を出したら
また温めてくれた
凰ちゃん
今
何考えてる?
また
私とお姉ちゃん重ねてる?
この手は
私の手だよ