ただ、まっすぐ君を想う。

久しぶりに

凰ちゃんに電話した



「雛?どーした?」



「久しぶり…凰ちゃん
元気だった?」



「うん、元気だけど…」



「今日、なんの日か知ってる?」



「知らない
誰かの誕生日とかだった?」



「んーん…
うちのパパは節分の日」



「あ、そっか…
ちゃんと豆まいた?」



「学校で友達とやったよ
学校中走り回ってたら先生に怒られてね…」



「うん、でも楽しそうだな」



「うん、楽しかった
オーストラリアも豆まきする?」



「するわけないじゃん」



「だよね…」



節分の話がしたいわけじゃない



でも凰ちゃんの声

久しぶりに聴けた



やっぱり

好きだな



「雛、ビデオ通話してもいい?」



「え、うん…」



「雛の顔、見たいから…」



「え…」



そんなこと言われると

照れちゃう



でも私も

凰ちゃんに

会いたい



なんか

恥ずかしい…



「あ、凰ちゃんに…会えた…」



「うん、雛見える」



照れる



凰ちゃんが見てる



「えっと…
今日、日本はバレンタインデーで…」



「こっちもそーだけど…」



「あ、そっか…
凰ちゃん、もらった?チョコ」



「え、誰に?」



「誰か、いないの?
会社の人とか…
義理チョコくれないの?
私は、友達に友チョコ作ったの!
味見してたら、すごいニキビできて…」



「どこ?見せて…」



凰ちゃんの顔が急に近くなって

ドキドキした



キス

するみたいだった



「見ないでよ
恥ずかしいよ
でね!コレ!」



さっきバイト先で買ったチョコを見せた



「コレは自分用
自分へのご褒美!」



「またニキビできるぞ」



「ハハ…そーだね

ホントはね
冴島くんに買ってあげたんだけど
冴島くんを待ち伏せしてる女の子
見つけちゃって…」



「へー…
雛、渡そうとしてたんだ
譲ってよかったの?」



「うん
ただ冴島くんがしつこいから
面倒くさくて買ったの
でも本命チョコ渡そうとしてる子いるなら
私のチョコいらないかな…って…」



「面倒くさいって…
最低だな、雛」



「うん、だって…」



「好意がないと、そう思うかもな…
オレもそうだから、なんかわかる」



やっぱり

凰ちゃんに

あげなくて正解だった



あげてたら

面倒くさいって

思われたかも



「オーストラリアは
義理チョコも友チョコもなくて
女性が男性にあげるんじゃなくて
大切な人に想いを伝える風習らしいよ
大切な人にバラを1輪贈るんだって…」



「へー…そーなんだ」



「雛ーーー!!!」



下からママの声がした



「雛ー!お客さん!ちょっと来てー!」



「はーい!
あ、凰ちゃん、ママに呼ばれた」



「うん、じゃ、また…」



「あ、凰ちゃん!
今度、いつ電話してもいい?
凰ちゃん忙しいよね
でも凰ちゃんも
たまには電話してもいんだよ」



「ママに呼ばれてるんだろ
早く行きなよ」



凰ちゃん

私がしつこいから

鬱陶しかったかな?



「あ、うん、じゃあ…
凰ちゃん忙しそうだから
あんまり電話しないようにするね」



凰ちゃんに手を振って

通話を切った



誰だろう?



もぉ!

せっかく凰ちゃんと会えたのに…



もっと話したかったな



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