ただ、まっすぐ君を想う。
「ご飯の前に私達も温泉行かない?」
「あ、いーね!」
「すごい広いみたいよ」
「テンションあがる」
「私、ちょっと休んでていい?」
「雛、どーした?」
「なんか具合悪い?」
「あ、おっぱい見られたくない?」
「雛、大きいから大丈夫だよ」
「ごめんね
夕飯食べたら入るかも…」
ちょっと
ひとりになりたかった
ひとりっていうか
凰ちゃんに会いたくなった
みんなが出て行った部屋で
凰ちゃんに電話した
「凰ちゃん…」
「雛?今日から旅行じゃなかったっけ?」
凰ちゃんの声
聞きたくなった
「そーだよ」
「どお?楽しい?」
「うん…
温泉、大きんだって…」
凰ちゃんと入りたいな…
「へー…楽しみだな」
「うん…」
凰ちゃんがいたら
もっと楽しいのに…
「凰ちゃんは?今日休みだったでしょ
何してた?」
「同僚と飲んで来た
今、帰って来たとこ」
「早いね」
「奥さん待ってるから
早く帰らなきゃなんだって」
「ふーん…」
奥さんか…
一緒に住んでるっていいな
「凰ちゃん…」
「ん?」
「楽しい?」
「ん?…なにが?」
「毎日、楽しい?」
「んー、雛から電話くるの毎日待ってるよ
今日はこないって思ってたから
声聴けて嬉しかった」
「面倒くさくない?
休みの日まで電話してきて…」
前の彼女と別れた理由
同じこと
私はしてるのに…
「面倒くさくなんて、ないよ」
「じゃあ、面倒くさいこと言ってもいい?」
「なに、それ…どんなこと?」
「凰ちゃん…
…
会いたい
…
凰ちゃんに会いたいよ
…
今すぐ来てよ」
「…」
電話の向こうの凰ちゃんは
黙ってしまった
「ね、面倒くさいでしょ
ごめんね、無理なこと言って…」
「面倒くさくなんてないよ
オレも会いたいから…
…
でも、ごめん…すぐ行けない」
わかってる
子供だけど
ちゃんとわかってる
「うん…困らせてごめんね
…
凰ちゃんと付き合ったら…
凰ちゃんの彼女だと思ったら…
余計会いたくなるんだ
…
ただ、好きだった時は
会えなくても当たり前だと思ってたけど
…
彼氏のいる友達見てたら
いいな…って、羨ましくて
ちょっと寂しくなった
…
イチャイチャって
どーやってするの?
私も凰ちゃんとイチャイチャしたいな…
…
初めて付き合ったから
初めての彼氏だから
いろいろ期待しちゃうんだよね
…
子供なのにね
ごめんね…
…
もっと子供だったらな…
前はそんな欲とかなくて
ただただ、凰ちゃんのこと好きだったのに…
…
戻りたいな…
前の私に…
…
ごめん…
凰ちゃんにこんなこと言って…
…
ただ…」
「雛…
もぉ謝らなくていいよ
…
辛かった?
…
オレ、やっぱり無責任だった
こーなるのわかってて
雛と付き合った
…
ただ、雛を好きだって感情を優先した
…
ごめん、雛…
…
…
戻ろっか…
…
前のオレ達に…
…
オレ、雛のこと、好きだよ
大好きだよ
…
だから…
お互い好きなまま
前のオレたちに、戻ろう」
私は
ただ
凰ちゃんの声が聴きたくて
私は
ただ
凰ちゃんのことが大好きで
電話したのに…
「うん…わかった…」
凰ちゃんが言ってることは
別れようって意味だって
子供でもわかった