きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「……真凛?」

帰りの電車の中、「聞いてる?」と言いながら、鈴ちゃんが私の目の前で心配そうに手をひらひらさせる。

「あ、ごめん、ちょっとぼんやりしてた」

「疲れた?」

「ううん、大丈夫だよ」

「本当? 私、次の駅で降りるけど。大丈夫? 一人で帰れる?」

「もちろん……!」

鈴ちゃんはこの後、家族でご飯を食べに行くらしい。

「それならいいけど。しんどくない? 電車で帰れる?」

親が近くまで車で来ているから送ってもらおうか?、という彼女の申し出に、慌てて首を振る。

「いや! 本当に大丈夫! 生で試合を見るのは久しぶりだったから、ちょっと興奮して疲れちゃった」

「そうだよね。いやあ、それにしても、迫力凄かったなあ。動きも音も、テレビで見るのとは全然違うね」

鈴ちゃんは本当に楽しんでくれたようで、「また行こうね」と言ってくれた。

「本当に気を付けて帰ってね? しんどかったら、駅までご両親に連絡して迎えに来てもらいなね?」

「うん、本当に今日は付き合ってくれてありがとう!!」

手を振りながら、降車する鈴ちゃんを見送る。


試合が終わってからもずっと、プレーしている彼の姿が頭の中で流れ続ける。

宮本くん、かっこよかったな……。

やっぱり最後、声をかけたかったな。

「お疲れ様」って。
「かっこよかったよ」って。

一度伝えたかったと思うと、伝えなかった後悔ばかりが降り積もる。

「今日、会いたかったな……」

今日は部員がいたし、声をかけられなかったのは仕方がない。

それに明日は月曜日だ。学校で会える。また明日、伝えればいい。

でも、試合を見た今日だからこそ伝えたかった、という気持ちが大きくなっていく。

さすがにもう試合会場にはいないよね。
今から学校に行けば会えるのかな。

気が付けば自分の家の最寄り駅を通り越して、学校の最寄り駅にいた。

「勢いで来ちゃったけれど……」

そもそも、何時に終わるんだろう。

深山くんが試合後に「学校へ戻る」と言っていたから、ここで待っていれば会えるかなと思ったけれど、よく考えてみれば、この後も練習があるのかもしれない。

何やっているんだろう、私。

やっぱり帰ろうかな。
いや、もしかしたら会えるかも。

少しの期待が、どうしても私をこの場に残らせる。

体育館で見た白いジャージがいくつも見えたのは、帰ろうか、それとももう少しだけ待ってみようか、悩みながら三十分程経った時だった。

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