四季の姫君



へへへ、と笑いながら渡した花束を受け取り、ぎゅっと抱きしめた心。



…泣きそうだ。


ずっとずっと、密かに思っていた1つが、達成できた実感で。


この子を成人させたい。
できるだけ、健康に近づけて。



そう願っていたのが


叶ったんだと実感して。


笑っているこの子を見て。


「やっぱお花はいいよねー、退院してからは買ってなかったから久しぶり」


にこにこ笑う彼女は、何も言わない僕を不思議そうに見上げる。


「…たかはし?」
「ん?」


「どしたの?」


「いや、…おめでたくて、嬉しくて」


「父親じゃん」



感激している僕をおかしそうに笑う心。


「同窓会は無かったの?」


「やっぱ体力なくて、式出ただけで疲れちゃって。会場で会えて喋れたしもういっかなーって」

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