四季の姫君

「矢野先生、おはよう」


「おはようございますー」

学校へ着き、職員室へ向かえば、自然に目に入る結真くんの席。

彼は素知らぬ顔でもうすでにPCに向かっていた。

さすが車、やっぱり早い。


朝礼を終えて、声をかけてきたのは隣の席の先輩の先生。


「持ってきてる?」

「あ、ありますよー」


前もって用意しておいたものを机の下から取り出し彼女へ渡す。



「ありがとー、人多かった?」

「はい、まぁ、そこそこ。やっぱり人気ですね」

紙袋の中を覗きながら聞かれる、答える。


「男性のみなさん、バレンタインでーす」


その声に「おぉ」と声が上がる。みんなでつまんでください、と大容量のチョコにぽつぽつと群がる男性教諭たち。



さ、私は授業の準備して、美術室へ向かわなきゃ。



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