四季の姫君

「それに、心。びっくりさせようとしてたっぽいから」



そう言った僕に、心はバレたか、と言う表情を見せる。



「忙しくて今日が成人式なんて知らないかと思った」



どう? と



体を滑り込ませて入ってきた心は綺麗な振袖姿。赤を基調とした花柄は所々キラキラしていて、



くるりと回ってみたはずみで光る。



いつもいつも見ていた


病院での姿と全く違う、


まさに晴れ姿に思わず


おぉ、と拍手をしてしまう。



「綺麗です」




「でしょーー」


この振袖、気に入ったんだーと



ふらふら揺れる心。



「無事、成人しました」


「…おめでとう」



「ありがとー、わぁーいいにおーい」
< 9 / 22 >

この作品をシェア

pagetop