ともだち
『ねぇ』
「.........」
『ねぇって』
「.........」
『無理して話してとは言わないけど、黙ってちゃわかんないよ?』
「.........っ、」
彼女とは道中、一言も口を聞かなかった。
その間も頭を反芻するのは、バイト先の上司からのセクハラを伴う言動たち。
こんなこと、優愛に言っても解決しないのに。
そんな薄汚い考えが頭から離れない。
家に着くと、彼女もまた自分の家のように上がりこむ。
彼女は玄関で靴を脱ぐなり私を捕まえ抱き締めた。
『私、前に話したよね』
「......何を?」
『私は、優美だって。
優美が辛いなら一緒に背負うし、優美が逃げたいなら私が代わりにそれを受ける。
それくらいの覚悟があって優美と一緒にいるの。わかる?』
「...っ、」
『ごめん。急に...。伝えたくなった。無理に引っ張ったりして、ごめん...』
「優愛...」
彼女のまっすぐな優しさが今までの嫌なことを浄化してくれる。
涙が自然と溢れてきて、それをなだめるように彼女が私の頭を撫でる。
「...私、バイト辞めたい。
男の社員さんにね、腰触られたり、彼氏いないの?とかしつこく言い寄られて...」
『私がいるって言いなよ』
「言わないよ。言えるわけないでしょ」
『.........』
「ねぇ優愛?優愛にとって、私は何?」
『優美は、私の全て、私自身だよ』
優愛はそう答えると、私を先程よりも強い力で抱き締めた。