友人
「さ、行こうか。」

私のいつもの速度に合わせてゆったりと歩き出した藤は、私の顔を覗き込んで瞳を瞬かせた。

「いつもと何か違うと思ったら…お化粧してる?」
「うん。どうかな?」
「すごくいいと思う。目元が華やかだね」

藤は、人の容姿の変化に疎い。
私が髪を20センチ近く切って初めて髪型の変化に気が付くような人なのに、最近はメイクの変化にも気が付くようになったのは、恋人ができたから、だろうか。

藤と私は、すごく仲良しだ。
私にとって藤は唯一無二の存在で、藤にとっても特別だと、本人がよく口にしてくれている。
でもそれは、恋愛関係ではない特別だから、密接であるはずなのにどことなく薄い膜がある。
それが世間からの見え方が反映されたものなのか、それとも、思うほど私たちは親しくないのか、私には判断がつかない。

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