毒舌な君の,ひどく甘い素顔
「え,あっと……」

「次,数学でしょ? 教えてくんない?」

「はっはい」

「敬語,やめて。何回いったら覚えてくれるわけ? 笹原さん別に頭悪くないよね」



そんな嫌みにもどきどきするなんて,私はきっと重症。

また? なんて女子の嫉妬と敵対心のこもった視線をビシビシ感じる。

私が恋に落ちたあの日から,度々声をかけられる。

些細なことでも。

数学で分からないところ,確かに私は教えてあげられる。

だけど,何故,私なのか。

何度考えても分からなくて,緊張で頭がぐるぐるする。



「ん。ありがと」



回らない頭と舌でなんとか答えると,今田くんは満足げに笑って戻っていく。

その瞬間,この教室では時が止まる。

男女構わず短く息を吸って,硬直して,女子が次の瞬間に手を取り合って喜ぶ。

正面から破壊力の高いその笑顔を見た私は硬直したまま。

……きっと,顔が赤い。
< 7 / 22 >

この作品をシェア

pagetop