溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
 先程日和美(ひなみ)が勢いに任せて口走った言葉を一言一句(たが)わずスラスラと続けると、信武(しのぶ)が含みをたっぷり感じさせる表情でニヤリと嘲笑(わら)うから。

 その笑顔にゾクッと身体をすくませたと同時、グッと腰を引き寄せられて「俺たち、もう【付き合ってる】し、そういう下世話なことしても許されるんじゃね?」とか。
 語るに落ちるとは正にこのことなのではないかと、日和美は自分の軽率な発言に歯噛みした。

 それでもやっぱり不破(ふわ)と違って信武が相手だと添い寝だけではすみそうにない気がするから。

「でも……でも……でも……。私……」

 上手い逃げが見つけられなくて涙目で信武を見上げたら、「……そこまでイヤかよ」と至極悲しそうな顔をした信武に小さく吐息を落とされた。

 日和美はその表情と声音に、何だか自分が信武に物凄く酷いことをしている気持ちになってしまう。


「――ま、俺も嫌がる女を無理矢理抱く趣味はねぇからな。とりあえず今夜は添い寝だけで許してやるよ」

 それでもどうしても日和美のことを離したくないみたいにギュウッと腰を抱く腕に力を込められたから。

 日和美は先程感じた罪悪感のせいでそれを振りほどくことが出来ないまま、グッと下唇を噛んで「……リビングでもいいですか?」と妥協案を提示した――のだけれど。
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