溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
「あああーーーっ!!」

 布団がズルリとバランスを崩して、あろうことか柵の向こう側へずり落ちて行くのが見えて――。

 慌てて手を伸ばして端っこを捕まえた!……けれどダメだった。

 重い木綿入りの掛け布団は、日和美(ひなみ)の手をスルリと抜けて真っ逆さま。

 ちょうどさっき見るとはなしに見たスーツ姿の男性目がけて落ちていくではないか!


「きゃーーーっ! 危ない! 避けてーっ!」

 声を限りに叫んだけれど、遅かった。


 〝その瞬間〟は、何故だかとってもとってもスローモーションに見えた日和美だ。

 ふわっふわの色素の薄い男性が「え?」と言う顔でこちらを振り仰いだのが見えて、「わ! すっごいハンサム!」とつぶやいたと同時、その顔がゆっくりと布団に覆い隠されて見えなくなった。
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