溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
「お前なぁ、こう言う時くらい少しは空気読んで、じっと抱かれておいてやろうかな?とか言う気になれねぇのかよ」

 照れ隠し。結構いっぱいいっぱいな気持ちで日和美(ひなみ)を抱きしめている信武(しのぶ)としては、腕の中の日和美の反応が気になってたまらない。

 それなのに――。

 信武に「あのぉ!」と声を掛けるなり、にわかにモジモジし始めた日和美に、信武が思わず不機嫌そうな声を出したのもやむを得ないだろう。


「む、無理に決まってるじゃないですか! だってだって! 本がっ! 本が足元で大変なことになっちゃってるんですよ⁉︎」

 少し身体を引き離すようにして彼女を睨みつけたら、これ幸いとばかりに日和美がスルリと信武の腕から(のが)れてしゃがみ込んだ。

 そうしてラグからサッと本を持ち上げると、ページの折れなどがないか確認してすぐパタンと閉じて。
 閉じた状態のまま、またどこも傷んでいないかを()めつ(すが)めつ確認した。

 ひとしきりチェックをした後、ほぅっと吐息をついて「大丈夫。【立神センセぇ】のご本、無傷でしたぁ~」とニコッと信武に笑いかけるから。

 信武は毒気を抜かれて文句を言いそびれてしまった。

 そもそも自分の本を目の前でこんなに大切に扱われるとか……【自分自身を】大切にされているようで何だか面映(おもは)ゆいではないか。

 それに――。
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